【忘れられないお客様エピソード】ハルは今、私の膝の上で寝ています・耳の聞こえない飼い主様から届いた、一通のメール

こんにちは。ネコちゃん探偵のプロ 代表の川野です。

ハルは今私の膝の上で寝ています。長い一人旅で疲れたのかぐっすり眠っています。

これは、ある捜索を終えたあとに飼い主様からいただいたメールの一文です。

私はこの3年間で2,500件以上の捜索を監修し、捜索員たちの毎日の報告と、飼い主様からのたくさんの「ありがとう」に目を通してきました。そのすべてが宝物ですが、正直に言うと、今でも時々読み返してしまうメールがいくつかあります。

今日は、そのうちの一通をご紹介させてください。

猫ちゃんがいなくなって、今まさに眠れない夜を過ごしている方にこそ、読んでいただきたいお話です。

一本の、少し時間のかかる電話

その依頼は、「電話リレーサービス」を通じてかかってきました。

電話リレーサービスとは、耳の聞こえない方が手話通訳のオペレーターさんを介して電話をかける公的なサービスです。飼い主様の手話をオペレーターさんが音声に、こちらの言葉を手話に訳しながら会話が進むため、通常のお電話より少し時間がかかります。

その電話で語られたのは、こういう状況でした。

  • 愛猫の「ハルちゃん」が脱走して、帰ってこない
  • 飼い主様は耳が聞こえず、ご近所への聞き込みや、名前を呼びながらの捜索が難しい
  • そして——今月、最愛のご主人を亡くされたばかり

のちにいただいたメールには、その時のお気持ちがこう綴られていました。

永久のお別れになるのかと…今月主人を亡くしたばかり、今度はハルともお別れになるのかと頭がおかしくなりそうでした。

ご主人を見送ったばかりのお家から、今度はハルちゃんの姿まで消えてしまった。その中で「藁にも縋る思いで」勇気を出して助けを求めてくださった。

この電話に全力で応えられなかったら、私たちがこの仕事をしている意味はない。すぐに捜索員の派遣を決めました。

「言葉が通じるだろうか」という不安

現場に向かったのは、捜索員のHでした。

飼い主様は当初、とても不安に思われていたそうです。

耳の聞こえない自分と、初対面の捜索員が、うまくやり取りできるのだろうか——。当日は、娘さんが通訳のために付き添ってくださっていました。

ところが、ふたを開けてみると、通訳はほとんど必要ありませんでした。

捜索員のHは、飼い主様の顔をまっすぐ見て、身振り手振りを交えながら、ゆっくり、口の動きが分かるようにハキハキと話しました。

どこをどう探すのか。カメラをどこに仕掛けるのか。ハルちゃんは今、どのあたりに潜んでいる可能性が高いのか。ひとつ伝えるたびに、きちんと伝わったかを確かめながら。

特別な技術ではないのだと思います。目の前の方に「どうしても伝えたい」と本気で思っているかどうか。ただ、それだけの違いです。

飼い主様はメールにこう書いてくださいました。

娘の通訳がなくても捜索員のHさんは私に分かるように身振り手振りでゆっくり話してくださり、しかも穏やかでハキハキした感じですぐとても良い信頼関係が築けました。

そして捜索員のHは、捜索を始める前に、飼い主様の目を見てこう約束しました。

「たとえ今回の捜索期間で保護できなくても、しっかりとアフターフォローしてサポートします」

「この言葉に勇気づけられて、気持ちがすっと軽くなった」——飼い主様は、そう振り返っておられます。

捜索終了まで、あと2時間

捜索は3日間のプランでした。

やることは、いつもの地道な手順です。

ハルちゃんが通りそうな場所・潜んでいそうな場所に少量のごはんとトレイルカメラを仕掛けて、「いる場所」と「いない場所」を証拠で絞り込んでいく。

姿が確認できたポイントに捕獲器を設置して、ハルちゃんが自分から入ってくれるのを待つ。

外に出た猫ちゃんは警戒心がマックスです。そう簡単には姿を見せてくれません。1日目が終わり、2日目が終わり、3日目。

捜索終了まで、残り2時間となりました。

その時です。

「無事保護しました!」

捜索員のHからの一報を受けた飼い主様は、娘さんと飛び上がるようにして抱き合い、喜ばれたそうです。

ハルちゃんは、お家からそう遠くない場所で、ちゃんと生きて待っていました。

いただいたメール(全文)

後日、本部に届いたメールです。ご本人の許可をいただいて、そのまま掲載させていただきます。私が下手に要約すると、この文章の温度が消えてしまう気がするからです。

ほんとに夢のようです。永久のお別れになるのかと…今月主人を亡くしたばかり、今度はハルともお別れになるのかと頭がおかしくなりそうでした。

藁にも縋る思いでキャットバンクに電話リレーサービス(ろう者である私は電話できないので手話通訳オペレーターを介してやり取りするサービス)を利用して助けを求めました。

すぐ捜索員を派遣していただき、コミュニケーションがうまくいくのかと心配でしたが、娘の通訳がなくても捜索員のHさんは、私に分かるように身振り手振りでゆっくり話してくださり、しかも穏やかでハキハキした感じですぐとても良い信頼関係が築けました。

Hさんなら何とかしてくださるだろうととても気持ちが軽くなりました。たとえ失敗してもサポートしますと力強くおっしゃってくださったのも私を勇気づけてくれました。

あと2時間で3日間の捜索が終わろうとするとき無事保護しました!とメールあったとき飛び上がらんばかりに娘と抱き合って喜びました。

最後のお別れのあいさつに来られたとき今後気を付けること色々アドバイスをいただいたあと深々とお辞儀をして去っていくすがたをみると「一期一会」という言葉にぴったりだと感じました。ありがとうございました。

ハルは今私の膝の上で寝ています。長い一人旅で疲れたのかぐっすり眠っています。夢のようでしっかりと抱きしめています。2度と離すまいと…ありがとうございました。

捜索員のHさん、ありがとうございました。全国を回っておられますが、気をつけてください。下手な文章でごめんなさい。

「下手な文章でごめんなさい」と結ばれていますが、とんでもない。
これほど私たちの心を打った文章は、そうありません。

捜索員のHが、深々と頭を下げた理由

最後のご挨拶の日。捜索員のHは、ハルちゃんの脱走を二度と繰り返さないためのアドバイスをひとつずつお伝えしてから、深々とお辞儀をして現場をあとにしました。飼い主様はその後ろ姿に、「一期一会」という言葉を重ねてくださいました。

私たちの仕事は、保護できた瞬間も一つのゴールではありますが、それが全てではありません。

ハルちゃんが膝の上で安心して眠る。飼い主様がその温もりを、二度と離すまいと抱きしめる。その「当たり前の毎日」がこの先ずっと続くことまで見届けて、ようやくひとつの捜索が終わります。

実は私自身も、保護猫ちゃんと暮らしています。

毎日ニャーニャー鳴きながら足元にスリスリしてきて、撫でると喉をゴロゴロ鳴らす

あの何気ない時間が、ある日突然消えてしまう恐怖を想像すると、胸が締め付けられます。

だからこそ、「ハルは今、私の膝の上で寝ています」というあの一文には、私たちがこの仕事で取り戻したいもののすべてが詰まっていました。

今、猫ちゃんを探しているあなたへ

このエピソードを通してお伝えしたかったことは、3つです。

  1. 猫ちゃんは、あなたが思うよりずっと近くで、生きて待っていることが多いということ
  2. 捜索は「残り2時間」で報われることがあるということ。最後まで諦めなかった人だけが、この瞬間に立ち会えます
  3. どんな状況の方でも、私たちは一緒に方法を考えるということ。耳の聞こえない方も、電話リレーサービスやメール・LINEでご相談いただけます。お身体の事情で捜索が難しい方こそ、遠慮なく頼ってください

「もうダメかもしれない」と思っている方へ。
ハルちゃんの飼い主様も、一度はそう思われました。それでも、勇気を出した一本の電話が、膝の上の温もりを取り戻しました。

あなたの猫ちゃんがまた膝の上で眠る日のために、私たちは今日も現場に向かいます。

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